これからのインバウンド業界を考えるにあたって、まずは現在の動向をさらっとおさらいしたい。
なにより一次データから。
https://webunwto.s3.eu-west-1.amazonaws.com/s3fs-public/2020-03/24-03Coronavirus.pdf
いきなりPDF且つ英語でアレだが、UNWTO(世界観光機関)のデータ。3月24日時点のものだが、ある程度の指標にはなる。
スライド4枚目からは、今回のインパクトが9.11やリーマンショックの比ではないということを物語っているが、1か月以上経った今なら、20~30%減にとどまる程度、という予測は楽観的なのではないか、と思ってしまう。
さて、各国の動向も調べたいが、まずは日本どうなるの、ってことで。
Weekly Ochiai(4月8日)
緊急事態宣言が出た当日の夜に放送されたNews Picksの動画。
一部抜粋版はyoutubeでも観られる。
経営共創基盤CEOの冨山和彦さん、慶應大学医学部教授の宮田裕章さん、「withコロナ」「開疎化」などの言葉を生み出した安宅和人さんなどと落合陽一さんのディスカッション。
肩書のすごそうな人たちが話していると自分も頭が良くなる気がするので、気をつけねばいけない。
ともかく、テレビで集まるメンバーではないので言いたい放題言っていて純粋に面白かった。
<要点まとめ>
- 航空業界はキャッシュがなくなるし、そうなると飛ばないから仮死状態になるかダウンサイズして持たせることになる。(仮死状態、冬眠する、という表現も)
- コロナは人が作り上げてきた効率の良い「都市」というシステムの弱いところをことごとく攻撃してきた。
- 「閉→開」、「密→疎」の動きがwithコロナ時代の流れになる(=開疎化)。
- 人が動かず、モノが動く時代へ。人が動くことが今まで以上にいろいろな意味でのコストがかかるように。
- 環境への意識も高まるだろう。
- 「緊急事態宣言期間(数週間)」→「Withコロナ期(数か月~1年程度)」→「ポストコロナ(数年)」という時間軸で物事を考えないといけない。
- 抗体の有無が可視化するようになるのでは。
- 食やイベントはオープンスペースに移動していく。
他にも、デジタルネイチャーの考え方とか、途上国が完全収束しない場合は第2波、第3波が来るという話とか、DXが加速化するとか、今こそベンチャーのチャンスだとか、いろいろ。
ちなみに、安宅さんがこの動画で言っていた「風の谷」について興味を惹かれてブログを読んだら、想像以上に感動的な話だった。めっちゃ一緒にやりたい。
ちょうど自分の興味がサステナブル・ツーリズムだったので、その辺り興味ある人はぜひ。
(安宅さんは『イシューから始めよ』の作者で、出版からわずか4か月後に大震災が起こり、今回は、コロナがまだこれほど世界的な危機に瀕する直前の2月20日に「シン・ニホン」を上梓されたばかりで、タピオカ並のタイミング……)
翌週の「withコロナ時代の地方戦略」も、なかなか面白かった。
要点割愛。
インバウンドじゃなくてまずは内需でしょ、ということはどこでも聞く話だが、ここでも。
次に、インバウンド系の人達はどんなことを言っているのか見ていく。
まずは、やまとごころ。
動きが速いし、なにより業界の人たちへのアプローチも幅広く、毎朝サイトをチェックするのが日課となっている。
4月16日に行われたオンラインセミナーのレポート。
残念ながらセミナーは視聴することができなかったが、レポートは興味深く読ませてもらった。
ゲストの2名は両者ともインバウンド比率の非常に高い(おそらく90%以上)事業を展開してきたため、厳しい現実に直面している。
その中でも、反省点や今後に向けた話は参考になる。
<要点まとめ>
- 今までの反省点として、インバウンドに偏りすぎていたこと、OTAでの集客に頼りすぎていたことがある。
- 一つのマーケットに頼りすぎる危険性を実感し、今後は顧客の多様性に目を向けていきたい。
- 周辺の事業者たちと何かできないか、地域との連携を模索している。
- 人の意識が変化する中、たとえまた訪日客が来るとしても元のようにはならないだろう。
- 人の動きの制限が出る分、単価を上げるなどの変化もあるだろうし、逆に人とのコミュニケーションが深まるかもしれない。ガイドの要不要含め、デジタルと人はどちらも注視していきたい。
などなど。京都で「Fujitaya」というゲストハウスを運営する藤田さん、飛騨で「SATOYAMA EPERIENCE」という自転車ツアーを運営する山田さんという、インバウンド業界の有名人の意見を知ることができて、ありがたい。
また、同サイト「やまとごころ」で紹介されている、地域の取り組みをピックアップ。
上記はほんの一例で、事業者やDMOの多くは、今後に備えての準備期間として前向きに準備をしているようで、心強い。
京都はさすがの体制。
webinarに申し込んで視聴してみたが、1か月そこらでこれだけの動画をアップできるというのはすごいことだと思う。
事業者に向け、観光客の減少にどう立ち向かうのかといった、全体の俯瞰的な話から事業継続計画、観光のポイントや外国語研修まで、幅広いラインアップを揃えており、京都市観光協会の真剣さを感じる。
また、座禅の解説動画やビデオ通話背景など、京都の観光資源をここぞと有効活用していて、いささかずるい(完全に僻み)。
もちろんダウンロードしてZoomの背景にしている。
さて、お次はおなじみ「訪日ラボ」の記事をご紹介。「訪日ラボ」も毎朝のルーティーンとして欠かさずチェックしてます。
4月27日の記事、5月1日更新。
<要点まとめ>
- フェーズは「サバイバル期」「回復準備期」「誘客回復期」の3つ。
- 3.11のインパクトよりはるかに大きい打撃が予想され、回復までは長期戦を覚悟すること。
- 地域>国内>訪日客の順に呼び戻す。悪い意味で話題になった「Go toキャンペーン」などの予算もそれなりに割かれている。
- これまでのインバウンド神話(順調な右肩上がり)前提の戦略は不可能で、準備期間にコンテンツの整備や新商品の開発など、誘客に結び付く施策を講じるべき。
- こんな時期だからこそ、情報発信は大切。プロモーションの意味も込めてSNS等活用すべき。また、過去のSNSの分析など、今後のコンテンツ開拓に結び付くことも。
総括的で、要点が押さえられている読みやすい記事だ! と思ったら、このかた、じゃらんnetの初代編集長、Yahoo! ニュースプロデューサーなどを経て、Deep Japanのエグゼクティブ・ディレクターをされているかなりの経歴をお持ちのすごい方だった。(通訳案内士と国内旅行業取扱管理者の資格まで!)
全体として、今の日本のインバウンドは「今は耐え時、我慢の時間も長いからその間に回復する時期に向けて準備しよう!」という方向性で動いているように感じる。
あと、特徴的なのはインバウンドもだけど、国内のお客さんももっと大事にしなきゃ、っていう流れはしばらく主流になるんじゃないかと思う。
ただ、回復する時期っていつ? もう耐えられないんだけど! っていう人も多いかと思う。個人的には、今までの「ピンチをチャンスに!」が通じない相手なんじゃないか、という懸念もある。
ということで次回は、気になる海外の動向やオリンピックについて考察する。